● JR予土線:土佐昭和駅(高知県)
数年前の事、1週間の予定で 愛媛の松山に出張したのだが、4日間で作業が終了し、3日間 空きが出来た。
せっかく久しぶりに松山まで来た事だし、どのように過ごそうか… そう考えた時に JRの時刻表を眺めていて 私はある事に気がついた。
と言うのは、宇和島までは何回か行った事がある。
高知にも何度か行った。
しかし、宇和島から高知までの JR予土線に乗った事が無かったのだ。
途中にある窪川という地には 大学時代の友人で 若くして事故死した友人の実家があり墓もある。
せっかくだから、一度、行ってみよう… そう思ったのだ。
真夏で 雲一つない やたら暑い日だった。
2両編成の各駅停車の普通列車に宇和島から乗り、一路 窪川を目指したのだが、思いの外 のんびり走る列車で そのくせ冷房も上手く効いておらず、乗客も宇和島では結構乗り込んだ人が多かったけど、駅に停まるたびに降りる人ばかりで乗る人はおらず、少しづつ減っていって やがて車両には アロハに綿パンで胡散臭いカッコの私と 年寄りが数名、それに 見るからに真面目そうな女子高生が2人だけ。
電車が走る山の中の風景は 北海道では見ることの出来ない 鬱蒼とした竹林が続き、女子学生の一人が 電車の窓を開けると、生暖かいけど 竹の香りがする気持ちの良い風が車内を抜けた。
時折、眼下を四万十川の源流が見下ろせる渓谷で ノンビリと楽しむには最高の景色だった。
そんな状態が1時間ほど過ぎた頃、周りにナンにも無い山の中の駅に電車は停まった。
普通だったら、列車は すぐ動き出すはずなのだが、なぜか その駅では停まったまま数分が過ぎても動き出そうとしない。
そのうち、周りを見たら 乗っていた僅かばかりの乗客が 皆、申し合わせたように ホ-ムに降りてるし、気がつけば 運転席から運転手までウチワで自分を扇ぎながらホ-ムに降りようとしており、なにげに見ていたて私と目が合うと 苦笑いしながら近寄ってきて
「お客さん ここで、窪川方面から来る列車とスレ違うまで あと15分は動かないから 今のウチにトイレ行って タバコ吸っといた方がいいよ。」
と言う。
他の乗客は 乗り慣れた客達ばかりの様で 見ると、既にホ-ムの灰皿を囲んで タバコを吸ったり、自販機で飲み物を買ったりしている。
真面目そうに見えた女子高生も 運転手と 何か喋りながら ニコニコ笑って 一緒にタバコを吸っている。
喧しいぐらいセミが鳴いていたが、コンクリ-トやアスファルトだらけの都会では絶対に味わえない「夏」が そこにはあった。
自販機で買った缶コ-ヒ-は 生ぬるかったけど、美味かった。
森の香り一杯の中で吸ったタバコも美味かった。
たまたま、その日だけが 運良く 良い日に巡り会っただけの事かもしれないが いっぺんで その土地が好きになった。
